「山田くーん?」



あれから数日が経ち、放課後は毎日弓道場へ足を運んでいる。


もちろん入り口で大人しく見てるだけだけど、それでもあたしに気付いた山田くんに手を振ると、小さく振り返してくれるだけで十分すぎるほどに幸せだった。


ただ、香里奈ちゃんの視線が痛いけど…。



今は山田くんの教室前。

ドアから中を覗き、山田くんの姿を捜す。



「あれ?柚希ちゃん久し振り~」


「あ、要くん!久し振り~!」



キョロキョロとしていると、要くんが向かって来た。



「聖に用?」


「うんっ!でも、今いない?」


「あぁ、聖ならあっち。マネに呼ばれて話してるよ」



そう言った要くんの指差す先を見てみると、廊下の向こうで何やら話し中の山田くんと香里奈ちゃんの姿が。


か、香里奈ちゃん…!?



「気になる?柚希ちゃん」


「えぇ。ものすごく」


「ぷはっ。相変わらず素直だね」



即答したあたしに肩を揺らしながら、要くんが言う。


要くんて、ほんとに山田くんと正反対でよく笑うよなぁ…。



「気になるなら行っちゃえば?ドーンと抱き付いたりしてさ(笑)」


「ハッ…!」



そっか!その手があったか!


ピコンッ!と頭の上で電球を光らせたあたしに、要くんは少し驚いた顔をした。



「…え、マジで?」


「行ってきます!ありがとう、要くん!」


「えっ?あの…」



さらばだ!

要くんに敬礼し、爪先の方向を山田くんへ向け一目散に駆け出した。



「…ま、いっか。おもしろそうだし」



なーんて要くんがボヤいてるなんて知りもせずに。