「あの…大丈夫ですか?」
「…え?」
ボーッとしていた意識の中、少しハスキーな声が届いて弾かれたように顔を上げた。
そこには心配そうにあたしを覗き込む、香里奈ちゃんの姿。
伊吹先輩は後輩のマネに仕事の仕方を教えるだかで、部室へ行っている。
「顔色悪いですけど…」
「あ、大丈夫大丈夫!ありがとう心配してくれて」
香里奈ちゃんの体操着のラインの色は赤。
つまり1年生だ。
あたし、年下に気を遣わせるだなんて情けない。
「さっきの…山田先輩の彼女だって話、本当ですか?」
「…えっ?」
ドクン、と心臓が脈打った。
香里奈ちゃんの瞳が真っ直ぐで、あたしはその眼差しに全てを直感してしまったのだ。
「…本当だよ?」
声が震える。
「…そう、ですか……何か意外ですね。山田先輩が、柚希さんみたいなハイテンションな人と付き合うなんて」
クールとハイテンションて真逆なんですけどね?と笑いながら、香里奈ちゃんは続けた。
「まぁ、後で山田先輩に聞いてみます♪」
「…そう…。それがいいと思うよ」
あくまであたしの言葉は信用しないのか、それとも信じたくないのか。
わからないけど、香里奈ちゃんは“山田くんと話せるきっかけが出来たこと”が嬉しいらしく、ずっとニコニコ笑っていた。
…あぁ、もう。山田くんめ。
またライバル増やしやがってこんにゃろう。

