放課後。
あたしは荷物を鞄に詰め、足早に弓道場へ向かった。
「次、一人一本ずつ」
『はい』
弓道場へ着くともう練習は始まっていて、遠くに設置された的に向かって一列に並ぶ部員たちが見える。
あたしは入り口で、そーっと中を覗いていた。
えっと、山田くんはいずこどすか~。
なんて、ボヤきながら目を必死に動かしていると。
「…あれ、柚希ちゃん?」
「ひゃおうっ!!?」
突然、後ろから声をかけられて。
驚いたあたしは、猫のようにビョーンと跳び跳ねた。
慌てて振り返ると、そこには伊吹先輩がいた。
「伊吹先輩!」
「こんにちはー。何してるの?こんな所で」
伊吹先輩はニッコリ笑い、あたしの隣に並んで中を覗いた。
「聖捜してるの?呼んで来ようか?」
「あっ…い、いいんです!邪魔はしたくないので…」
両手を振って否定すると、伊吹先輩はそんなあたしを見て少し考えたあと、もう一度中を覗いた。
「…う~ん、ま、大丈夫かな!」
「へ?大丈夫ってなに、が…っ!?」
大丈夫って何がですか?
そう聞きたかったのに、あたしの腕は伊吹先輩に掴まれ、あっという間に弓道場の中へと引っ張られていた。