【六花&松川】




「松川くん、山田くんと仲直りできてよかったね!」


「…ん、そうだな」


「うっ…海、楽しかったね!」


「うん」



えっと、ど、どうしよう…。

なかなか続かない松川との会話に、六花は必死で話題を探していた。


六花は大人しいが、社交的ではあるので話せないことはない。ただ、松川が話さないのだ。


それが、松川がまだ柚希のことを想っているからだと六花は分かっていた。



「は、花火…!松川くんは、何花火が好き!?」


「……え?」



やっと見付けた話題を笑顔で叫んだ六花に、松川は眉間にシワを寄せてぽかんと見つめた。


その表情に、ハッとした六花は恥ずかしさに頬を染める。



「ご、ごめん変なこと聞いて…っ」


「…や、いいけど」



あ~あ、わたしダメだなぁ…。

はぁーっと溜め息を吐き出すと、隣の松川が口を開いた。



「…打ち上げ花火」


「……へ?」


「打ち上げ花火が好き」



ふっ、と微笑んだ松川に、六花は目を見開いたあと、視界が歪んでることに気付いて慌てて目を反らした。



「う、うん。わたしも、打ち上げ花火好き…っ」



やっと絞り出した声は震えていたけれど、松川の優しさに胸が熱くなった。


そして少しの沈黙の後、それを破ったのは珍しく松川だった。



「…六花ちゃん」


「…あ、な、なに?」


「一生懸命話そうとしてくれて、ありがとう




ニッコリ笑った松川の笑顔に、六花がまた泣きそうになったのは秘密である。