「伊吹先輩!」


「……?」



体育館に戻ろうか、と数歩前進した時、後ろから呼ばれた名前。


振り返ると、聖の友達の要くんが走ってこちらに向かって来ていた。



私の前で止まって、少し荒い呼吸を繰り返す。




「どうしたの要くん」


「や、ちょっと……心配で」



要くんはそう言うと、チラッと保健室の閉ざされたドアに視線を向けた。



「…聖、柚希ちゃんと上手くいったんですか?」


「……そうみたいね」



溜め息混じりに返すと、今度は私を見た。



「…あれ…泣いてない」


「は?」



泣いてない?何を突然。


突拍子もないことを言う要くんに、不審な目を向ける私。