だがまたその友人もその日の夕方、獣に食いちぎられたような姿で発見されたのだ。
立て続けに殺害された二人と、新聞によって明かされた真実が恐怖を産み、街中は心神ともに堕ちていっていた。
そんな中でも、信仰している聖誕祭だけでも華やかであれと、祭りを開催していたと言う。
「お願いしますマリア様! どうかイアンを見つけだしてください! あたしなんかじゃ…とても……」
泣きながら訴えてくるアテナを横目に、小さなため息をつく。
あの屋敷に入った瞬間から、生きた人間の気配など全くなかったからだ。
おそらくはもうこの世にはいないと確信は持てるのだが、そんなことを不安定な状態の人間に言えば、何をするかわからない。
「保証はしない。だが……」
マリアは窓を開け放ち、外に灰を落とした。
「あたしの犬達を、そろそろ返してもらわねぇとな……」
マリアは金の髪を夜風に靡かせながら、屋敷へと向かって行った。
この先の敵が、何者であるか知らずに…。

