「まだ分からないのか」

 三人を睨みつけながらいうと、踵を返して屋敷から出て行ってしまった。


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 灯もつけず、月明かりが照らされる部屋にただ一人、タバコを吸っているマリアが座っていた。

 領主が来た途端、屋敷から逃げるように出て行ってしまったマリア。

 領主の後ろから感じた、黒く、ねっとりとした魔力。
 以前現れた公爵の部下のまがまがしい魔力とは違った、あまり感じたことのない力。
 何かに捕われるような、欲望渦巻く感覚を覚えた。


 コンコン…


 マリアはくわえタバコのまま、銃口をドアに向けた。

「マリア様。あの、アテナです…」

 その声を聞き、マリアは警戒心を少し弱めてドアを開けに行った。
 そこには、俯いたアテナが佇んでいた。

「夜分遅くにすみません。貴女が、あのオルレアンの聖女様と知って…その、聞いていただきたいことが……」

 マリアはドアを開けたまま部屋の中へと戻り、アテナは怖ず怖ずと部屋に入った。