「まだ分からないのか」
三人を睨みつけながらいうと、踵を返して屋敷から出て行ってしまった。
+++++++++++++++++++++
灯もつけず、月明かりが照らされる部屋にただ一人、タバコを吸っているマリアが座っていた。
領主が来た途端、屋敷から逃げるように出て行ってしまったマリア。
領主の後ろから感じた、黒く、ねっとりとした魔力。
以前現れた公爵の部下のまがまがしい魔力とは違った、あまり感じたことのない力。
何かに捕われるような、欲望渦巻く感覚を覚えた。
コンコン…
マリアはくわえタバコのまま、銃口をドアに向けた。
「マリア様。あの、アテナです…」
その声を聞き、マリアは警戒心を少し弱めてドアを開けに行った。
そこには、俯いたアテナが佇んでいた。
「夜分遅くにすみません。貴女が、あのオルレアンの聖女様と知って…その、聞いていただきたいことが……」
マリアはドアを開けたまま部屋の中へと戻り、アテナは怖ず怖ずと部屋に入った。

