そこには気持ち悪いくらいの笑顔をしている領主と、申し訳なさそうに肩を落としている息子が佇んでいた。
「いや~マリア様。お待たせして大変申し訳ありません。昨夜ご迷惑になりましたバウムです! ほれ、謝らんか!」
「申し訳ありませんでした」
半ベソをかきながら謝ると、マリアは立ち上がり、部屋から出ようとした。
そのマリアを、ドアで佇んでいたナエルが声をかけた。
「どちらへ?」
「帰る。こんなところにいては気分が悪くなる」
お付きの三人は顔を見合わせ、わけのわからないままマリアの後ろについていった。
領主や息子は去っていく四人を、ただオロオロと見つめるだけ。
声をかけても、マリアから何の返事も返って来なかったからだ。
当然、三人の声にも聞く耳持たず。
マリアは沈黙を守ったまま外へ出た。
「おい! 何か言えよマリア!」
フェンリルはいてもたってもいられず、肩を引っ張ると、マリアのいつもより睨みのきいた瞳で見上げられ、フェンリルは息を飲んだ。

