マリアはいつもと変わらない表情だが、ファブニルはメロメロ状態。
 残りの二人に目をやると、照れ臭そうに頬をピンクに染めていた。

 この表情を見たマリアは、くわえていたタバコを落とすほどに驚いた。
 ファブニルならともかく、女か食い物にしか興味のない二人が、男に対して好意などありえないと思っていたから。

「いかがなさいましたか? マリア様?」

 心配そうに顔を覗きこんでくる。
 切なげな顔と潤んだ瞳で覗き込まれたマリアは、ぎこちなく言葉を返した。

「い、いや。何でもない」

「そうですか。何かありましたら何なりとお申しつけ下さい。マリア様のためなら、いかなるご用もいたしますので」

 ナエルはマリアの左の手の甲に軽く口づけし、踵を返して部屋へと案内する。

 案内された部屋には、長いテーブルに純白のテーブルクロスが敷かれ、その上には色とりどりの薔薇が綺麗に並べられていた。

 大きな窓からは日の光りが良くあたり、清々しい。
 椅子を引き、順番に座って行く。