カフェから出ると、目の前には豪華な馬車が到着していた。
 中に乗り込もうと扉を開けると、二人のタバコの煙に阻まれて中に入れず咳き込んだ。

「えっは! ごほごほっ!」

「あんた達吸い過ぎよっ!!」

 新鮮な空気を入れ替えるために窓を全部開け、そのまま領主の所へ向かってもらった。

「でも、あのマリアがすんなり屋敷に行くなんてな?」

「五月蝿い。お前は感じなかったのか?」

 フェンリルは髪をかきあげながら鼻で笑い、残りの二人は顔を見合わせた。

「バカにすんなよ? あんだけプンプン臭わす奴も珍しいぜ」

 マリアは不敵な笑みを浮かばせ、一行は馬車に揺られながら領主の屋敷へと向かった。



 ようやく到着し、屋敷の入り口に馬車を停め、四人は一足先についていた領主に出迎えられた。

 ででんっと突き出た中年太りの腹。開いているのかいないのかすら分からないほどの細い目。
 ちょびひげを撫でながら、そのでっぷりとした腹を揺らしてマリアの前にやって来た。

「おぉマリア様! ようこそお出でくださいました! 改めまして、領主のドブットソンと申します」

 握手を求められたが、マリアは断固拒否した。
 いつになくマリアの眉間にシワがよっている。

「ここではお話するのは失礼にあたってしまいますので、あ~ささっ、中へどうぞどうぞ」