「伝えな。当の本人が来なければあたしは動く気はない。とな」

 尚も言葉を続けようとすると、マリアは銃を収めている足でイスの上をガンッと踏み、銃を取り出し突き付けた。

「イイコにしないと、オシオキだ」

 不敵な笑みを浮かべると、衛兵は背筋を凍らせ、一礼してその場から立ち去った。

 マリアはタバコの灰を落しながら銃をしまった。
 ファブニルは小さなため息をつきながら、部屋へと戻ってしまった。

 パタンと部屋の扉を閉めたあと、クローゼットから手荷物を取り出してカーテンを閉める。

 手荷物から六芒星の描かれた黒いマットを敷き、その中心に赤い石を置く。
 パチンと指を鳴らせば、石はクルクルと回り、一筋の光りを放つ。

「こっちが北ね」

 六芒星と光りを照らし合わせて位置を修正し、石を取り除く。
 代わりにタロットカードを置き、導きたいものの言葉を紡ぐ。

「先への道標を示せ」

 フワリと風がどこからともなく吹き、カードはその風に乗って裏返ったまま山札と三枚のカードに置かれた。

 軽く息をつき、カードをめくっていく。
 意味を整理して出た答えは、この街の北西の位置にある、位の高い者が原因だというものだった。