それと入れ違いに来るように、三人の衛兵がマリアのテーブルまでやって来た。
「失礼致します。オルレアンの聖女様とお見受け致しますが、少々ご同行願いますか?」
衛兵の一人が胸に手を翳しながら一礼し、マリアは灰皿にタバコを押し付けた。
「なぜ同行せねばならない? あたしは昨夜来たばかり。何の危害も加えていないはずだが?」
腕を組みながら衛兵を睨みつけ、衛兵はしどろもどろと返事する。
「い、いえ。領主殿にお呼びしろと命を受けまして…」
そんな姿を見てか、フェンリルが鼻で笑いながら紫煙を吐いた。
「ほ~ん。街の番犬の衛兵が、領主の犬に成り下がるたぁ、世も末だねぇ?」
それを聞いて、衛兵達は押し黙った。
「そういぢめるもんじゃないわフェンリル。せっかくのご招待ですもの、アタシの相手もしていただけるかしら?」
ルビーの瞳で衛兵の一人を誘惑し始める。
頬を赤らめる衛兵を不敏に思ってか、フェンリルが呆れた口調で言った。
「気ィつけろ~。そいつオネエだから」
その一言を聞き、衛兵達は一気に青ざめてファブニルから離れた。
ファブニルは静かに殺気をぶつける。
「と、ともかく。ご子息が迷惑をかけたので、少しでもお詫びをしたいと申していますので、その…」
マリアはタバコをくわえたままイスから立ち上がり、手を腰に当てて見下すように言った。