「ねぇマリア。アタシは多くの命を奪ってしまったわ。姉さんを救えず…。なのに医者してるなんて、罪滅ぼしのつもりって感じよね…。神に祈るなんてバカなことはしないわ。アタシは、あなたの許しがほしいの…」

 涙をうっすら浮かべる真剣な眼差しで、ファブニルはマリアを見つめた。

 マリアは視線をそらし、窓へと足を運んだ。

「お前はあたしの許しではなく、死んだ姉に許しをもらいたいんじゃないのか?」

 体をピクリと動かすファブニル。
 タバコに火を点け、静まり返った街を眺めた。

「でなければ、お前は姉の影を引きずって、オネエなんかやっているわけがないだろ。姉がいつでも傍にいてくれると思って、その姿をしているだけにすぎない」

 ファブニルは一呼吸置き、フッと口を歪ませた。

「かなわないわね、あなたには…」

 背もたれに体を預け、前髪をかきあげた。

「アタシは…もう一度姉さんに会いたいがために、あなたについてきたのかもしれないわ…会えるはずないのに…弱いわね……」

 ボロボロと涙を流すファブニル。