そこは、聖母マリアの神像が中央にある噴水の広場。
 すぐそばにあるカフェテラスの所で、五人の輩がたむろっていた。

 あのおばさんの言っていた通り、回りの人々は見て見ぬふり。

「もうやめてください!」

 嫌がるウエイトレスの女性の腕を掴んでいるのは、色々なアクセサリーをつけた男。
 他の輩に比べ、かなりハデな格好。一発で領主の息子だというのがわかる。

「離してもいいけど、俺の屋敷に来てくれるって約束したら、どぅほっ!?」

 何かが息子の頭を直撃し、流血しながら無様に倒れた。

「なー。レンガじゃなくて、こっちの鉄の塊にしたほうがよくなかった?」

 50キロと書かれた鉄の塊を片手で軽々持ちながら、フェンリルを見上げた。

「ぶわかかお前。人間相手にンなもん投げてみろ、一発であの世行きじゃねぇかよ」

「あら、よくってよ。アタシの好みじゃないから地獄に送ってさしあげなさい、ルーシュ」