水の入ったグラスを渡し、マリアは一気に薬を飲み干した。
「誓いの儀式なんて、ただの信仰深い奴らだけの気休めだろ…にがっ! 調合間違えてねぇのか? …ん?」
ドアを叩く音が聞こえてきた。確実にあの二人ではないと確信は持てる。
ファブニルがドアを開けると、そこにいたのは赤ワインを手にしたアマンダだった。
マリアの一番好んで飲んでいる、赤のロゼを持って。
「あらアマンダさん。夕食のお呼びってわけじゃなさそうね?」
「すみません、もう少しで呼びに来ると思いますから」
苦笑いで答えるアマンダに、ファブニルは小さく笑い、部屋から出て行った。
怠そうに身体を起こし、台の上に置いてあったタバコに手を伸ばした。
「どこか悪いの?」
最後の一本のタバコを取り出し、火を点ける。
「心配ない…。ただの生理痛だ…」
心配するアマンダに一言返し、イスに座れと指差した。
アマンダはテーブルにワインを置き、イスに座った。
気を遣ってか、マリアはタバコの煙を窓の方に吹き出した。
「よく覚えていたな? あたしがこのワイン好きだったこと…」
タバコを消しながら、テーブルに置かれたワインを目にした。
「忘れるはずないじゃない。先代のマリア様もお好きだったワインですもの」

