執事はまた苦笑しながらマリアに視線を向けた。

【マリア様は、何かございませんか?】

「別にないねぇ。あったとしても、お前じゃ答えられない」

【ではマリア様のご質問は保留ということで。おや、そうこうしている内に、着いちゃいましたね。門を開けます】

 たどり着いたのは、緑一色に染め上げられた城。

「ほんっっきでセンス疑うわね…」

 引きつく顔を何とか押さえながら言うと、執事は苦笑した。

【ま、まあそう言わないでください】

 両手でドアノブを引っ張り、錆び付いた音とともに開け放たれた。

 ドアノブから真正面に見えるのは、きらびやかなシャンデリアと、上へと続く階段。

 フワッとした絨毯を歩き、執事は四人に体を向けて一礼した。

【ここから先は、私は進むことを許されてはいません。姫君は最上階の『天空の間』にいらっしゃいます】

 ススッとその場から離れながら、階段への道を譲る。

 まだ頭を下げている執事を横目に、四人は時を告げる階段を上って行った。