布切れの無数の目が鈍く光り始め、長い爪を空に翳しながら暗雲を呼び寄せる。

「そうはさせるか!
ライトニング・ボルテックス!」

【遅いな。
マッドネス・ストーム】

 光りの雷と闇の嵐がぶつかり合い、巨大な爆風が炸裂。

 回りの家屋や木々が吹き飛ばされて、薙ぎ倒されていき、ルーシュとフェンリルはシールドで防御する。

「おいおい。ヤバくね?」

 フェンリルが冷や汗を流しながら呟くと、ルーシュが背中からヒョコッと現れる。

「マリア…」

 心配そうに見守るルーシュ。

 マリアは咳を一つしたあと、乱れた髪をかきあげた。

「調教のしがいがあるじゃねぇか」

【よくほざく口じゃ。それこそ倒しがいがあるというもの。じゃが、ワシはメイデンの前へと汝を生きて連れていかねばならんのじゃ】

 蛇の頭を触手のようにうねらせながら言うと、感じたことのない悪寒が背筋を襲った。

「アタシのこと、忘れないでちょーだいよ…」

 ファブニルは魔法陣の中央に立ち、冷たい汗を流しながら不敵な笑みを浮かべていた。