マリアは魔物に向かって走り出し、爪を避けながらムチをその腕に巻き付ける。

 そして巻き付けたと同時に魔物を飛び越えて反対側へ着地。

【小賢しいのぅ。そんなモノで、わしを捕まえたとでも…】

「ダークネス・ボルト!」

【なんじゃと?! ぐああああっ!!】

 マリアのムチから闇色の雷が発動し、魔物は驚愕と悲痛の叫びをあげながらまともにくらった。

 聖女である者は、決して闇に属する者の力を借りた術を使ってはならないという、主と契約を交わしている。

 破れば主の怒りの刃にその身を貫かれ、レテの紋章を刻まれ、能力を全て失ってしまうのだ。

 だがそんなことを微塵も恐れず、中級魔獣ダークスターの力を借りた術を発動させるのは、マリアだからこそなのだろうか。


 トトトン!


 ファブニルは針を影に投げ打ち、呪文を唱える。

「ダークネス・ボルト!!」

 針は避雷針替わりとなり、影と魔物とを繋げるように闇色の雷が襲う。