投げられた短剣は、空に浮いた長い爪が生えた手に飲み込まれた。
そこから徐々に、ヒビの入った仮面とともに本体が現れた。
古びた布キレを着ていて、腕と爪が異様に長く、足のない魔物がその場にフヨフヨと浮かんでいる。
「あら~。足がないのはいただけないわね~?」
バカバカしい言葉に、三人は言葉も出なかった。
何かツッコんでよ、っという視線を送ったが、三人はもっぱらムシ。
【随分と賑やかなんでのぅ、交ぜてもらおうと思って来たんじゃが…】
しわがれ声の老人に対し、フェンリルはタバコをくわえたまま返事をする。
「あいにく、美女限定なんだよじーさん」
魔物は残念そうな声を出したあと、掌を向けた。
【そりゃ、ちと残念じゃ。とりあえずコレは返すぞ】
掌から出てきたのは、ファブニルがさっき投げた短剣。
四人は慌ててその場から離れてガレキを盾にして身を潜めた。
「そんなモンかえさないでちょーだい!」

