辺りの淀んでいた空気をも清浄したあと、一息つくようにポケットからタバコを取り出した。
ジッポを探していると、横からフェンリルがライターに火を点けて差し出してくる。
二人は先端を火に近づけ、点けたあと紫煙を吐く。
「めったなことをするな。今雨降られたら野宿できないだろ」
「素直に礼くらい言えよ!」
吠えるフェンリルを無視し、マリアはそっぽ向いた。
くわえながら二人はフッと笑い、四人は前へと進みはじめた。
そのころ、メイデンは片膝着けてひざまづいていた。
「マリア=サムシエルとルーシュ=デモン様は、生け捕りで宜しいでしょうか?」
「えぇ。かまわないわ。その二人さえいれば、ナイトメアは甦る」
黒いフードを被った女は、氷付けにされた青年に手を翳しながらそう言った。
メイデンは立ち上がり、胸に手を翳しながら一礼する。
「御意。我が女王。
(イエス・マイシスター)」

