膝の上に腕を起きながら紫煙をはき、炎を見つめた。

「知るか。帰りたいなら帰れ」

「あなたを置いて帰れるはずないでしょーが!」

「ならバカみたいにンなこと聞いてくんじゃないよ。人形だろうがなんだろうが、売られたケンカは買う。そうだろ?」

 タバコを口元に持って行きながら二人に視線を向けると、違いない。っと同じ言葉を出した。

 フェンリルはタバコをくわえたまま横になり、立ち上った焚火の煙の向こうの星を眺めた。

「おっ。流れ星めっけ」

「あら。お願い事しなきゃね?」

「何を願う?」

「家内安全ってとこかしら?」

『お前はどこぞの姑か?』

 同時に同じことをツッコミ、三人はクスクスと笑った。

「でも、願いたいことはいっぱいあるのに、いざ願い事は? って聞かれたとき答えられないのって、何でかしらねぇ?」

 紅茶に映った自分を眺めながら言うと、タバコを焚火の中に放り込みながらマリアが横になった。

「それだけの想いしかなかったってことだ。それか、願うことがないほど、幸せを掴んでいたか、だな?」