黒い雲が覆われた都市。

 木々は枯れ果て、都市はゴーストタウンになっていた。

 そこに住まうは、下級の魔族や魔獣達。

 中心には茨が這う白い城。


 王座の間で、王座の椅子に座っているのは、フランス人形を抱き抱える少女、マリア=アイアン=メイデンだ。

 メイデンは小さなため息をつきながら人形に話しかけた。

「ねぇベルゼ? 『あの方』はオルレアンの聖女を生かして連れて来いっていうの。ルーシュ様はどっちでもいいみたいに言うの。どう思う?」

 ただの人形では返事は返ってこない。
 その人形を抱きしめ、更に言葉は続いた。

「ムカつくわ。何でこのあたしが人間なんかに従わなきゃならないの…。『契約書』さえなければ…あんな女など!!」

 人形の頭を握りつぶし、床へと叩きつけた。

 メイデンを宥めるように、一つの影がやってきた。

「まあそんな怒るなよメイデン。俺達だって同じ意見だしさ」

 頭の後ろに手を組みながらやってきたのは、見た目10歳前後の茶髪の少年。