驚いているあたしを見てか、マリア様は優しい笑顔で手招きする。

「おいでなさい、ルーチェ」

「あ、はい…」

 いつもと何ら変わりないマリア様なのに、何故か違和感を感じた。

「お座りなさい」

 訳もわからずあたしはイスに座り、手渡されたのはマリア様の好きなロゼの赤ワイン。

「お酒とタバコは、16歳からです。まだあたしは10歳ですよ」

 手で押し返すと、マリア様はクスッと笑った。

「いいんです。私が許しますから、お祝いで一口、ね?」

 お祝いと言っても、どっちの誕生日とかでもないのに、何の祝いかわからなかったが、マリア様の言葉通り、一口飲む。

「ぐっ。ニガイですっ!」

「あ。やっぱまだ早かったか」

 からかったのかと思うくらい、マリア様に文句を言った。

「冗談よルーチェ。大事なのは、ここからです」

 いきなり真面目な顔になるから、あたしは戸惑った。

 銀のカップに入れた聖水を指先に取り、あたしの両肩、頭、胸に当てていく。