一通り拭き終わり、汗を拭うと、タバコの匂いが漂ってくる。
おかしいな? ここは禁煙のはずだし、タバコ吸う奴なんていないはずなのに?
煙りが立ち上っている方へ行ってみれば、長椅子に俯せになって本を読んでいるマリア様がいた。
しかもタバコ吸って、読んでいる本は競馬雑誌って…。
「マリア様。こんな所で何やってんですか? タバコ吸ってる上に、しかも競馬って……」
呆れた顔で言うと、マリア様は咳き込みながら起き上がった。
咳込むくらいなら吸わなきゃいいのに…。
「うえっほげほっ! 皆吸ってるからどんな味するのかと思ってね、アハハまずいの何のって。あ、皆にはナイショね!」
人差し指を口元に当てながらウインクするマリア様。
三十路過ぎた人がやることかと呆れたが、でも憎めない人だった。
どんなに他のシスターにイジメられても、この方さえいれば、あたしは強くなれると、そう思っていた。
そう…あの時までは……。