「そうねぇ…。歩いて一週間だから、そろそろ村らしき所が見えてきてもいいころなんだけど…」

「きゃああああっ!!」

 どこからともなく、女性の叫び声が聞こえてきた。

「あっちから聞こえた!」

 被っていた布切れを捨て、ルーシュの指差す方向へ、まっすぐ駆け抜けていくフェンリル。

 しばらく走れば、シスターが何体かの魔族に追いかけられていた。
 それを見たフェンリルは、呪文を唱えだした。

 フェンリルの手の中には、無数の黒い雷の球体が生まれる。

「ダークネス・ボルト!!」

 力ある言葉を叫ぶと、球体は魔族のほうへ真っ直ぐ進んで行き、魔族はそれによって足元をすくわれた。

「誰だ!!」

 砂埃をかきわけて叫ぶ魔族Aの顔に、フェンリルの足が飛んできた。