店内はシャレたメロディが流れていたが、客はまばら。

 …というか、二人しかいない。

 まあ何十年に一度しか降らないという流星群を見たい奴らがいるからこんだけしかいないんだろうけど。

 そんなこと俺には関係ないし。

「お~いアニエス。ちょっと、救急箱持ってきてくれんか?」

 そんなに声をあげていないのによく響くのは、人が少なすぎるからだろう。

 奥からは大人びた女の声が返ってくるくらいなのだから。

 ヒールの音を小刻みに鳴らしながらやってきたバーテンダーの女に、俺は目を疑った。

 もちろん、その女もだ。

 だがオーナーはニコニコと笑みを浮かべていた。

 まるで、友達を連れて来たよと、言わんばかりに。

「手当は頼んだよ。また前みたいに、ミイラにしちゃったらかわいそうだからね?」

 ミイラって…どんだけ不器用なんだよ…。