フェンリルはその魔物と呼ばれる女にまんまと乗せられ、湖のほとりで抱き合っていた。

 アニエスと呼んだその女は、フェンリルにとって、忘れたくても忘れられない存在。

 町で皆と仲良く暮らしていたというのに、禁忌の子というだけで人間に凌辱され、殺された、フェンリルの恋人の名なのだから…。








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 お前と初めて会った日の事を、今でも覚えている。

 そう、星の雨が降る、あの夜だ…。


 あれは五年前のスピア流星群が流れた日のことだ。

 当時18歳だった俺は、知り合ったバーのオーナーに拾われた。

 殴られケガを負い、荒んでいた俺を、そんな俺をオーナーは拾ってくれた。

 なぜと言われてもしょうがない。

 俺は禁忌の子。

 オッドアイを持つものは、悪魔と人間の間に産まれた者の証。

 そんな俺を、何で拾ったのかは他でもない。


 それは店内に入って初めて知ったんだからな…。