フェンリルはその魔物と呼ばれる女にまんまと乗せられ、湖のほとりで抱き合っていた。
アニエスと呼んだその女は、フェンリルにとって、忘れたくても忘れられない存在。
町で皆と仲良く暮らしていたというのに、禁忌の子というだけで人間に凌辱され、殺された、フェンリルの恋人の名なのだから…。
++++++++++++++++++++++++++++
お前と初めて会った日の事を、今でも覚えている。
そう、星の雨が降る、あの夜だ…。
あれは五年前のスピア流星群が流れた日のことだ。
当時18歳だった俺は、知り合ったバーのオーナーに拾われた。
殴られケガを負い、荒んでいた俺を、そんな俺をオーナーは拾ってくれた。
なぜと言われてもしょうがない。
俺は禁忌の子。
オッドアイを持つものは、悪魔と人間の間に産まれた者の証。
そんな俺を、何で拾ったのかは他でもない。
それは店内に入って初めて知ったんだからな…。

