「静かね~。フェンリルってば遅いわね~?」

 生ハムのサンドイッチを美味しそうに頬張りながらいうと、店主がおかわりのコーヒーポットを持ってやってきた。

「旅の方、ひょっとしてゴブレットの街道を通ってきたのかね?」

 三人は顔を見合わせて頷くと、店主は物珍しい顔で声をあげた。

「よく生きてここまで来れましたなぁ。あの道には魔物が住み着いてて、旅の方はみんな回り道になるデサント街道を通って来られるんですよ」

 何でも、森に入れば霧がかかり、行き先が見えなくなり、歌声が聞こえてくるというもの。

 その声は透き通るような美しい声で、その声を頼りにそっちへ向かうと、その人の想った通りの人物が現れるのだという。

 そして無数のバラの蔓に捕まり、想っている相手の姿のままで喰われてしまうのだ。

「でも、よくそんな詳しい情報得られたものね?」

「実際見た人が、命からがら逃げて来たんですけど、喋った後、泡になって消えちまったんですよ。だから皆気味悪がっちまって…」