森の中の道を歩いていると、フェンリルがソワソワと辺りを見回している。

「どうしたの?」

「自然現象。先行っててくれ」

 フェンリルはそう言いながら木々の中へと入って行った。

 マリアが足を動かすと、後の二人もそれについていく。


 森の中に入って行ったフェンリルはズボンを整え、皆のところへ戻ろうとした。

「ん?」

 森の更に奥から、引き付けられるようなピアノの音と、マリアには到底及ばないが、透き通った歌声が聞こえてくる。

 どうせこの先の村に宿をとると言っていたし、少し寄り道しても支障はでないだろうと、一人森の奥へと足を運んだ。

 行くにつれて霧が濃くなり、右も左もわからなくなってしまった。

 だが音を頼りに進んで行けば、必ず出られるという安易な考えで進んでいた。