申し訳なさそうに俯くと、マリアはルーシュの頭をワシワシと撫でくり回す。

「な、何すんの~っ」

「シラけた面してんじゃないよ。タバコ買ってきな」

 コインの入った巾着を放り投げ、そっぽ向いて紫煙をはいた。

 ルーシュは頷いて巾着をポケットの中に入れ、部屋から出て行った。

 マリアは片膝を立てながらベッドにもたれ、深いため息をついた。

「聞こえる耳を持っていると、厄介だ」

 そう呟きながら、スゥっとタバコを吸い込む。

「聞こえる耳って、何?」

 ドアを開け、その言葉を出したのは水を持ってきたファブニル。

 テーブルにコーヒーを置き、イスに座る。

「それで?」

「あ?」

「さっきの『聞こえる耳』のことよ。何なのよ?」

 めんどくさい奴に聞かれたとため息をつき、タバコを灰皿に押し付けた。