太陽が真上にかかる頃、ファブニルがマリア達の部屋にソッと入る。

 ルーシュがマリアに付き添っているように眠っているのを見て、クスッと笑みをこぼした。

「ルーシュ。起きなさい。風邪ひくわよ?」

 小さな声で揺さぶりながら起こすと、ルーシュは寝ぼけ眼で伸びをする。

「んあ? もうメシ?」

「もうお昼ご飯よ? マリアを起こさないようにいらっしゃい。あとが大変だから」

 人差し指でウインクを一つ。

 ルーシュは苦笑いをし、去って行こうとするファブニルの裾を掴んだ。

「どうしたの?」

「俺…どうしたらいい?」

 ルーシュの言葉に息を詰まらせた。

 今にも声を上げて泣きそうな顔。

 ファブニルは視線をルーシュに合わせ、頭を優しく撫でた。

「他の誰でもない。お前はお前だ。お前は、マリアだけのモノ、でしょ?」

 ルーシュはハッと目を見開いた。
 落ち込んだ時、息詰まった時、いつもマリアがかけてくれる言葉。

「マリアなら、そう言うでしょーね? ホラ。早く行かないと、フェンリルがあなたのぶんまで食べちゃうわよ?」

「それはヤダ!」