朝日が差し込み、目を眩ませて起きたのはルーシュだった。

 視線を天井から、生暖かい風が頬を撫でる窓に目をやると、隣のベッドに横たわるマリアがいた。

 同じ部屋でいつも寝てくれないマリアが、ルーシュの隣で寝息をたてて眠っている。

 朝日に照らされた美しい顔に、少し頬を染めながらマリアのベッド脇に移動した。


「マリア…ごめんよ…俺……」

 涙ぐんだ瞳で寝ているマリアに謝る。

 なぜ自分があんなふうになったのか解らない不安。
 あの時、自分ではない誰かが自分を支配していて、本気でマリアを殺そうとしていた自分がいた恐怖。

 皆の声は確かに届いていたのに。

 でも自分の声が口から出てこなかった。

 手の届かない、声の届かない闇の中でもがいている自分がいるだけ。

 ただ闇の中にあったのは、滅美のみ。

 美しく散る華のような、滅美-ホロビ-しかなかったのだから。

「俺…どうしたらいいのかな…?」

 枕元で呟くように言うと、また眠気が襲い、そのまま眠ってしまった。