ファブニルの言葉を掻き消すように、死者達が足を掴む。

「ちょっ! はな、離しなさいよっ! このっ!」

 空から生暖かい雨がファブニルの頬に落ちる。

 だがその色は、赤。

(傷口が!?)

 上空では、ルーシュがマリアの首に手をかけていた。

 闇に埋もれた虚ろな瞳。
 マリアはか細い息を繰り返していた。

(……ど…こ…リア……すけて……)


「ったく…どこまでも手が、かかる…」

 震える手でルーシュの腕を掴み、睨む。

「ご主人様に、何やってんだコラ! 覚悟はできてんだろーな!」

 碧く光る強い瞳に睨まれ、ルーシュは脅えるように震えだした。
 首にかけていた手が緩み、マリアは咳き込んだ。

 ルーシュは自分の手を見ながら、まだ震えていた。

「契約の元、悪しき者を封印する!
アクエリオン・チェイン!」

 今度はマリアがルーシュの首に手を当て、封印の言葉を叫ぶと、天より一筋の光りが二人を包み込んだ。

 あまりにも神々しい光りによって、死者達は耐え切れなくなって浄化されていく。