今までにない恐怖が背中を這う。

「美味しそうな、恐怖を出してるわね? あたし達の力の源。恐怖・絶望・怒り・苦しみ。それら総てがあたし達の力の源となる」

 そう言うと、自分の服についた血を見て、残念な声をもらした。

「お気にの服、汚れちゃった。あたしの仕事は終わったわ。また、会いましょう?」

 可愛らしくスカートの裾を持ち、無邪気な笑顔で挨拶をする。
 次は体をルーシュのほうに向け、胸に手を当てて深々と一礼する。

 空間を歪ませ、夜の闇に消え失せた。

 一息つく間もなく、ルーシュが地獄の死者を呼び出して来る。

「バカ犬! 目ェ覚ませ!」

「自分の力がデカすぎて、制御できて、ねぇな…」

「暴走してるってこと?」

 ファブニルの言葉に、小さく頷いた。

「制御装置お前にしかつけられねぇんだ、ぐああっ!?」

 死霊がフェンリルを縛り上げ、生気を吸い出し始めた。

 ルーシュはファブニルの腕からマリアを奪い、夜空へと飛ぶ。