よろめきながらメイデンに手を伸ばすと、またメイデンは冷ややかに微笑し、髪を靡かせながらその手を避けた。

「あなたは『あの方』の御命令に背き、我が君を不完全なまま蘇らせてしまったわ。『あの方』はいたくご立腹よ? 死を持って償いなさい」

 絶望的な表情を浮かばせ、ベリアルはメイデンに向かって突進していく。

 冷ややかだった微笑を、無邪気な笑顔に変えた。
 次の瞬間、一瞬目を疑うような光景を垣間見る。

 口が耳まで裂け、瞳は獲物を狙うライオンのように鋭く、更に、体を縦半分に分裂させた。

 分裂した場所には無数の棘。
 ベリアルを挟むように食らい付く。

 ベリアルの痛いほどの断末魔。

 肉を刺し、ぐぢゃぐじゅとかみ砕くようにメイデンの体内に納められていく。


 マリア達は瞬きをすることも無く、その光景を見つめていた。

 完全にベリアルの姿も声も無くなると、メイデンは舌なめずりをしながらマリア達を虚ろな目で見つめた。

 まだ、食い足らないという瞳で。