『マリアーッ!』

 倒れたマリアの腹から滝のように血が溢れ出し、地面を紅く染め上げる。

 ファブニルが駆け寄り、血が吹き出す傷口に手を当て、必死で呪文を唱えはじめる。

「くっ! 間に合わない! フェンリル手伝って!!」

 フェンリルも同じ呪文を唱えるが、二人とも体力を消耗しすぎているのか、癒しの光りが弱々しい。

「くそっ! 間に合ってくれ!」

 そんな二人を目の当たりにし、脅えているルーシュ。
 何も出来ない、何の魔法も使えない自分が歯痒くて…情けなくて…。

 もっと俺に力があれば、と…。


 ドク…ン…


 ルーシュの心臓が音を立てて痛みを体中に伝わらせた。

 そんな中、ベリアルはマリアを貫いた腕を眺めていた。
 酸を浴びたように煙りが上がっている腕を…。

(なるほど。あの子供がなぜ血を舐めただけで寄生魔獣を吐き出したのかがわかった。聖女の血は、聖水と同じ効力を持っていたとは…)

 尚も治療を続ける二人。
 血は止まったが内部の損傷が激しく、このままでは命が危ない。