真の名を呼ばれ、優しく微笑むナエル。

 いや、ベリアル。

「自己紹介ありがとう。僕に敵わないことが、よくわかったでしょう? さあ、指輪を渡してください」

 手を差し出すベリアルに、頬スレスレに銃を放つ。

「誰がやるか。これはあたしの物。たかだか魔力が強いだけの魔族に、あたしがやれるとでも思ってんのかい?」

 皮一枚切ったのか、赤黒い血がベリアルの頬を伝う。
 それを指で拭い、ペロリと美味しそうに舐めた。

 視線をルーシュに向け、一瞬にして目の前へ飛ぶ。
 見上げるような上目遣いをすると、ニコっと微笑んで腹に蹴りを入れた。

「がはっ!!」

 続いてマリアに視線を向け、研ぎ澄まされた長い爪を振り上げて爪痕を残した。

「たかだか魔力が高いだけ? 言ってくれるじゃないですか。その魔族に殺される貴女は、ブザマじゃありませんか?」

 ベリアルの空いた手が、よろけたマリアの腹を貫く。

「ふぐっ!」

 肉を切り裂いた後の独特の音を出しながら手を抜き、マリアは力無く倒れた。