乱れた髪を整えながら、感嘆の声を出した。

「ほぅ、オリジナルですか? 見直しました。バカではないようですね?」

 フェンリルは顔を引き攣らせ、ナエルのいる上空へと飛ぶ。

 すぐ目の前まで飛ぶと、空中で蹴りと拳を繰り出して肉弾戦へと持ち込む。
 だがナエルは目を閉じたまま、安々と避けていく。

「少々残念ですね? もう少し愉しめるかと思っていたのですが…」

 スッと瞼を開くと、紫の両目が妖しく光る。
 ナエルの回りの空気が揺らぎ、フェンリルの体は恐怖を訴えた。

 こいつはアガリーのときとは違う、それ以上のクラスの相手だということを。

 ナエルは手をフェンリルの前に翳し、スッと右に動かしただけで、糸に縛られたように引っ張られ、地上へと落とされた。

「フェンリル! きゃあっ!?」

 ファブニルに勢いよく体当たりし、二人とも地面を滑りながら壁にぶつかる。

 フェンリルと壁に挟まれたファブニルは、嫌な軋み音とともに血を吐く。