マリアは即座に吐き出された黒いものを撃ち、近づく二人にも残りを放つ。

「カハッ! …あれ? 何で俺縛られてんの?」

 呑気な顔でイモムシのようにうねっていると、マリアのヒールがルーシュの尻に刺さる。

「うをうっ!」

「ったくこのバカ犬! もう一度聞く。お前の主人は誰だ?」

「へ? マリアは俺のだろはばべしっ!」

 今度は頭をグリグリと踏み付ける。

「ご主人様だろうが! ご・主・人・様!」

 縛られていない足をばたつかせながら、もがくルーシュを見下ろすマリアの口が、笑顔に歪んでいたことを、ルーシュは知らないでいた。

「さあ。今度はあのエロウルフとカマギツネだ」

 虚ろな目をしている二人を見たルーシュは、怪訝な顔をしながらワイヤーを切っていく。

「なあ。あの二人どったの?」

「ルーシュ。お前フェンリルに恨みがあるだろ? 操られてるからな、思う存分にやっていいぞ。荒治療が必要だからねえ」

 不適な笑みを見せるマリアに満面の笑みで返すと、剣を収めてフェンリルに向かって飛び出した。