もうどれだけ走っただろうか?

 たまに足がもつれ、息は肩でしなければいけなくなるほどに体力は消耗していた。

「ったく…ハァ…あたしをこんなに疲れさせやがって…。あいつらタダじゃおかねえっ!」

 ようやく領主の屋敷へとたどり着いたマリア。

 淀んだ空気。そして何より、領主の後ろから放たれていた巨大な魔力が、吐き気がするほど辺りに充満している。

 マリアはその魔力に立ちくらみをした。

「なんつー魔力だ…気持ち悪っ…」


 ギギギィィ……


 屋敷の鉄門が、錆びた音を立てながら、ひとりでに開け放たれる。

 歓迎するといわんばかりに。

 マリアはその誘いに乗り、門をくぐり抜けた。

 屋敷の入口まで何の罠も無く進み、ドアに手を伸ばす。

「おや? どうかいたしましたかマリア様」

 燭台を手にし、廊下に佇んでいたのは、あのバトラー。
 変わらないすました笑顔に、マリアはイラ付きを覚えた。

「あたしの下僕共が、まだ帰ってこないんでねぇ…」

「あのお三方なら、あちらに…」

 不適な笑みを浮かべながら、マリアの後ろを指差す。