私は戸惑いつつも……




とりあえず、電話に出る。



「…はい、もしもし。」



『お疲れ様。』



「…………?どちら様でしょう?」



『今度弊社が制作したCMに出演させていただく者ですが……。』



ん………?


CM…?


てか、この声ってもしや……



「は、晴海くん?!」




思わず声を上げて、それから……


恐る恐る久住の方を見た。



良かった…。
聞こえてないみたいだ。




「…も~!びっくりしたじゃん。」


『でしょ?作戦大成功。てか、俺もここに来て平瀬さんいた時にはかなりびっくりしたよ。』



「…うん、そうだよね。」



ホッとする声…。


他人行儀だったさっきとはまた違って……


言葉ひとつひとつが、心に染み込んでいく。



『…ごめんね。』


「…え、なにが?!」




『いちかの我が儘のせいで、昨日徹夜だったんだろ?木村さんから聞いたよ。』


あ…、昨日……。



何で晴海くんが謝るの。



「ごめんはこっち。約束してたのに……連絡もしないでごめんなさい。」


『つーか、お互い連絡先交換してなかったってのがウケるよな。今更気づいた。』



「…そうだね。」



『…だから…、登録しておいて。この番号。』



「…うん。」



『…まさかこんな所で会えるとは思ってなかったな。』



「…私も。でも木村さんから晴海くんがいるって聞いてたから絶対謝ろうと思ったんだけど……。よくよく考えたら、相当無理があったみたい。色んな意味で緊張したし…、圧倒されちゃった。」



『…圧倒?』



「ん。晴海くんの仕事してる所にね。ああ、やっぱり芸能人なんだって。」



『…今更そこ?』



「メディアを通して見るのとは全く違うじゃない?もうファンの心境だったよ。近くにいるのに遠いっていうか…。」