「………そう。だからかな…、まるで正反対なのに、愛されて幸せそうに見えるのに……同じ空気がここにある。」
「…え?」
「…なんて、ね。私なんかと一緒にしたら失礼か。」
「…いえ。光栄です。一緒に作っていく者として、頑張ります。」
「………。ねえ、久住さん。」
「…はい。」
「…あなた、パートナーがこの人でよかったですね。」
「…え?」
「この企画で…CMへの出演をさせていただきたいと思います。」
「……!菱沼さん!」
「…素敵な映像を撮ってください。」
「「……ハイ!」」
私は久住と目を合わせると…
小さく、ガッツポーズをした。
ふと見ると……
晴海くんが、優しく微笑んでいた。
次の瞬間…
「…ちょっとすみません、失礼します。」
晴海くんはスマホを取り出し、この場を後にした。
「いちかさん、メイク直します!」
「…あ、ハーイ。じゃあ、後日。どうぞよろしくお願い致します。」
私と久住は菱沼いちかとガッチリと握手を交わし……
その場に残された。
「…交渉成立ってところか。お疲れさん。」
「お疲れ様です。」
「…なあ、菱沼いちかって家族いないのか?」
「…雑誌のインタビューで家族のこと、書いてありました。両親の離婚と母の死……。後に祖母に育てられたけれど、他界したと。」
「…そっか……。よく調べたな。」
「…いえ。テレビ見ない代わりに、雑誌だけはよく読むんです。こういうインパクトある記事は…一度読んだら忘れられません。」
「…いずれにせよ…、今回はお前がいて良かったよ。俺と加地さんだけじゃあどうもならなかったかもしれないな。」
「…そんなことない。偶然ですよ。」
「……なあ、わこ……。」
「…はい?」
「…今晩…あいてる?」
「…え?」
♪~♪♪~♪♪♪…
「…あ、すみません。携帯鳴ってる…。」
…てか……、
今のって…?


