こんな久住の姿、初めて見た気がする。



「……私がヘンな事したから…どうやら負の連鎖が起こってしまったようですね。」



私は急いで資料を拾いあげると……


それを、久住に手渡した。




「…先程は、撮影中に申し訳ありませんでした。」



私は顔をあげられず……


深々と、頭を下げた。




「…や、全然。いちかもガチガチだったからいいタイミングでしたよ。」



「…ちょっと、晴海くん。」



「ホントのことだろう?」



「…そうだけど…。」



いちかが小顔をぷうっと膨らませる。



二人のやりとりに…


目を奪われていく。




なんて…絵になるのだろう。


ドラマの二人、そのものじゃん。



「…痛……。」



「「「え?」」」



3人が一斉に私を見る。



「…え?あ、すみません。胸がチクっと。」



……ん?



なんで?


「…平瀬さん、大丈夫?」



突然、晴海くんが顔を覗きこんでくる。



「…だっ…大丈夫ですっ!…ごめんなさいッ!!」




私はまた、ガバッと頭を下げた。



「…『ごめんなさい』…。」




こんな私を心配してくれて…ごめんなさい。



約束破ってごめんなさい。




………ごめんなさい。




「…平瀬…?」



心配そうな久住の声に…ようやく我に返る。



…馬鹿!なにどさくさにまぎれてこのタイミングで晴海くんに……




「…面白い人ですね、平瀬さん。」



「……へ?」




顔を上げるとそこに……


屈託のない笑顔が待っていた。



「謝りすぎでしょー?別に気にすることなんて何もないのに。」



見事なまでに他人行儀で…

なのに、ちゃんと私の声に応えている。