久住の目配せに相槌を打ち、なんども首を縦に振る。



こんなの…

子供だってできるだろう。




『役立たず』。


そんな言葉が…

今の私にはピッタリだ。





一方の菱沼いちかは…


眉をしかめながら、その説明にききいっていた。



納得…


出来てないのかな…。






「『晴海』くん入りまーす!」



不意にハルミくんの名前が呼ばれ…



私の心臓がドクンと跳びはねる。




「お願いしまーす。」


スタッフ一人ひとりに声をかけ、颯爽とスタジオに現れるハルミくん。



「…あ、宇野さん!」



久住が呼び止めて……


彼がこちらに振り返る。




「…うおっ」



その声は……



私と目が合ったその瞬間…、


明らかに驚いたことに他ならない。







「『ASアドコーポレーション』営業部の久住です。三ツ葉保険のCMを担当させていただいております。このたびはどうぞよろしくお願い致します。」




久住は再び自己紹介し……



「『久住』…さん?」



一瞬……ハルミくんの動きが止まる。


「………?」



そして私も…それに続く。



「…おなじく平瀬です。よろしくお願いします。」



「…はじめまして。宇野です、よろしくお願いします。」



真っ直ぐに私の目を見て……



ハルミくんはあたかも初対面であるかのように挨拶した。



『あやまらなきゃ…!』


…そう…思っていても……



この状況で、それが許されるはずもなかった。




「…少しお時間よろしいですか?」



久住の問い掛けに…


「…今から撮影なんで、休憩の時にいいっスか?ちゃんと聞きたいし。」


「…あ、ハイ。」