「…せ……、…平瀬!」
「…は、ハイっ!」
私は…
目を覚ました。
パサっと……
身体から何かが滑り落ちた。
…男物のコート…。
私はこれが誰のものであるかをしっている。
「…おはよう。」
目の前には……
いつの間にか、木村さん。
ちなみに彼のものでは…
ない。
「…あれ?久住さん達は…?」
見当たらないけど…。
「クライアントの所に行ってる。」
「…えっ…、嘘っ?」
置いていかれた…?
てか、誰も起こさないって…。
どうしよう、
本当に…?
「安心しろ。」
木村さんがポンっと私の肩に手を置いた。
「…お疲れ様だったな。今日から加地が復帰した。だから…お前にはこっちのことを頼む。」
「………でも…!」
「親御さんの命日だったのに…すまなかった。これは久住からの伝言だ。」
「………!」
「…何もプロジェクトチームから外れろって訳じゃない。ただ…、心身共にたまに休まないといい仕事はできない。」
「……木村さん…。」
「察してやれ。みんな冗談飛ばして笑ってるけど…、心配してるんだ。」
「………。」
私は……
手に抱えたコートを、ギュッと握りしめた。
「…すみません!…ありがとうございます。」
それから…木村さんに向かって、深々と頭を下げた。
「そのかわり、久住達が戻ってきたら、午後から菱沼いちかの撮影現場にお前も一緒に行け。」
「…え、いいんですか?」
「いいも何も、誤解をとかなきゃいけないだろう?【彼氏】の。」
「…………はい?」
何、彼氏って……?
「夜中に俺の携帯をならした迷惑な奴が1名。おまえらいつからそんな仲に…?」
木村さんが、スマホの画面を私に突き出した。
記された名前……。
着信ー…
晴海
「ハルミくん?なんで…」
「おまえらクリスマスに会う約束してたんだな。」
「……!!」
そうだ…。
そうだった…!
どうしよう…
わすれてた。
「…の、くせに…、お互い連絡先知らないってどういうことだよ。多分仕事だろうからって電話よこした訳だ。面倒くさいからお前の連絡先教えておいたからな。」
「……え。」


