ソラナミダ





「…お疲れ様。おにぎり買って来た。平瀬は…、ツナマヨと梅干しでいいよな。」


「お疲れ様です、すみません…、ありがとうございます。」



PM8時……。




会社にもどってきた久住博信が私の元へとやってきた。



「悪い。俺の確認ミスでみんなに迷惑かけて…。」



「…こんなの日常茶飯事じゃないですか。気にしないで下さい。久住さんでなかったらCM自体おじゃんだったかもしれないですよ。」



「……。優しいな、相変わらず。」



「…いや…、ホントのこと言ったまでです。」



「……ありがとう。」



「…あ、都築くん!これ、コピーお願い!」


「…ハイ!……あ、さっき平瀬さん席外してる時電話来てましたよ。」


「…誰から?」


「名乗んなかったけど、男の人でしたね。また後でかけ直すそうです。」



「…そう、わかった。」




「もしかして…、彼氏?」



「はいいっ?」


今のは…


本気でそう言ったの?



「……彼氏なんて…いません。それに、今…、恋愛にうつつをぬかす時間なんてモノもありません。よって…電話も仕事関係の方かと。」



「……【うつつをぬかす】ねえ…。」




久住はふうっとひと息吐くと……



「…恋愛は恋愛、仕事は仕事だ。いい加減…仕事をいい訳にするな。」



私の頬に、ひんやりと固い何かを押し当てた。



「ひゃっ!」


思わず頬に伸ばした私の手の指先が…


彼の手に触れた。



「…ぎゃっ!」



色気ない叫び声を発すると同時に…


ゴロンと足元に、それが落ちてしまった。




「……コーヒー…?」


私はそれを拾い上げる。




「…うつつをぬかしてないことは朗報だったが…なりふり構わず働くにはまだちょっと早い。休憩挟みながらしろよ?」



「…は~い。」