私は有給休暇をとり……
ある場所を訪れていた。
黒い服を身に纏い、
よく晴れた青空の下…
こんな所にいるのは、私くらいかもしれない。
お墓に水をかけ……
刻まれたその文字を、指でなぞる。
「一年……か。早いね。」
まるで昨日のことのようなのに、
過ぎてしばえばあっという間で……
一年というこの年月が、これからどれ程までに早く流れていってしまうのだろうと…
不安にかられる。
忘れたくない。
でも、思い出したくない。
そんな葛藤ばかりを繰り返すことも……
いつの日か、しなくなるのだろうか。
「…メリークリスマス。」
この場に一番相応しくないであろうその言葉で……
私は手を合わせる。
『クリスマスなのに一緒に過ごす人いないの?』
母が眉を下げて笑う。
『まだ早いだろう。』
ムスッとする父。
「……だかさら…、ホントに一人になっちゃったじゃん。」
目頭が熱かった。
けれどその衝動は…、
冷たい風と共に消え去っていく。
私は……
まだ、泣けない。
12月24日、
…クリスマスイブ。
…両親の命日。
一周忌を……
迎えていた。
♪~♪~……
帰路に着く私の携帯が……
着信を知らせていた。
画面に表示されているのは……
「…え?都築くん?」
後輩・都築くんから。
彼からの連絡
イコール……
仕事の話。
この鉄板の法則が覆えされることは……
まずは、ない。
外は薄暗く、徐々に冷え込みが増していた。
かじかむ指先の動きが…
まるでロボットみたい。
「えいっ」
…と、親指で力強く通話ボタンを押した。
『…もしもし、平瀬さん?』
「………。おかけになった電話は、現在、えー…電源を切っているか、電波の届かない場所にあるから…じゃない、ある為……」
『めっちゃ噛んでるじゃないッスか!』
「………。ごめん、今日私休みなんだけど~。」
『知ってます。だから…お休みの時にすみません。皆さんは連絡するなって言ったんですけど…』


