ソラナミダ

そのやり取りを、晴海くんはにこにこと眺めていた。



「…お前らがここにいたら、こっちも話せることも話せねえな。どれ、晴海っ、場所変えるぞ。」


「…ハイ。」


「おやっさん、おあいそ。」


「…はいよ!」





徐に立ち上がる二人の姿に、



「…失礼だねぇ。」



美帆が私にそっと耳打ちしてきた。





「……平瀬さん。」


「ん?」


「…あんま飲み過ぎないよーに。」


「…あ、ハイ…。」


「…あとは…、『頑張って』。」



「……?うん?」


…何を…?





去り際の晴海くんの言葉が理解できず、しばらく考えこんだが……



「…ちょっとお、わこ!」



美帆の一声でふと我に返る。



「今のなに?お隣りさんの意味深な言葉っ。てゆーか、あんなイケメンとちゃっかり親しくなって……、心配して損したじゃん!乗り換えちゃえ、久住さんから。」




「あ~の~ね~!そういう問題じゃないでしょうよ。どうしてすぐ恋愛に結びつけるかなあ…」


「……違うの?」


「…違うよ!晴海くんはただのお隣りさんで……、そう、ただの友達!」


「…アンタこの歳で男女の友情なんて…」


「…ある!」


「…ないね。」


「あーる!」



「…はいはい、言ってなさい。」



「……だいたいあっちが駄目だからすぐこっち…なんて器用なことはできないよ。」



「……。それだけ…、本気だってことじゃん。久住さんのこと。」


「…はあ?」


「…意気地なし。」


「…………。」


「もっと器用に生きれたらいいのにね、アンタも、私も……。」



「……美帆…?」