「おいおい、痛いじゃねえか。…に、しても…、社内恋愛とはやるなあ…、平瀬。」
「「………げっ。」」
私と美帆とが同時に声を上げる。
「仕事ばっかりして『恋愛はご無沙汰です~』的な顔しながら、お前も隅に置けねエ~な。」
ニヤニヤとさも楽しそうに笑い続けるアラフォー親父……。
いえいえ、
我が社の命運を握る尊敬すべき男、
木村さんが……
そこにいた。
「…木村さんこそ、毎晩女の人とバーで飲み歩いてると思いきや、こんな立ちのみ居酒屋で男の人とデートなんて……、意外です。」
「…そーだそ~だ~!」
美帆が加勢する。
「こんな店とは『のんべえ』さんに失礼だろう。それにだな、俺は女性をこういう男くさい環境には連れてきたくない訳だ。立ちのみする女ってどうよ?色気ねえと思わないか?」
「……。それ、私達に言ってますか?」
さすがに美帆も黙っちゃあいなかった。
「…ほら、すぐヘソ曲げる~。短気は損気だ、なあ、そう思わないか?」
木村さんは自分の連れに同意を求めた。
「…いいんじゃないスか?僕は意見をハッキリ言う女性も、居酒屋で飲んだくれる女性も、結構好きですよ。」
「「…………。」」
私と美帆の両者が…
ぽかんと口を開けて、その男を見た。
「~カ~ッ、これだからモテ男は困る。歯ぁ浮かないのか、そんなことばっか言って。」
「あははっ、浮かないッスよ。本心本心っ!」
何やら楽しそうに笑っているけれど……
はて、この笑顔…
どっかでみたことありやしないか?
「…でも……、無茶な飲み方は気をつけた方がいいかもしれないッスね。」
「…………。」


