ソラナミダ






「お疲れ~!」


「かんぱ~いっ!」



美帆と二人、カチンとジョッキを合わせる。



「…おやっさん、串焼きの盛り合わせと……チャンジャお願い。」


「はいよ。」


「わこ~、サラダもいこ。」


「…じゃあ…、シーザーサラダ!」


「はいよ。」


「セロリの浅漬け。」

「もち明太春巻き。」

「イカ焼き~!」

「とり軟骨唐揚げ~。」



目の前にはズラリと定番のつまみが並び…



女子会のテンションは最高潮。



「…どうよぶっちゃけ!本日の大仕事の具合は。」



どうやら美帆は気になって仕方ないらしい。


仕事が…?


ううん、もちろん私の恋愛事情が。



私はサラリとそれをかわしていたけれど……


次第に違う方向に話は及んでいった。




「…あれでしょう?木村さんに聞いたけど、三ツ葉保険のCMっ、『菱沼いちか』出演だって?」



「…そう!そうなの!木村さんもぎりぎりまで黙ってるなんてらしくないと思ったらさ…、いちかサイドがぎりぎりまでNG出しててなかなか決まらなかったんだって。」



ちなみに…、『木村さん』とは、CMに関わる全てにGOサインを出す重役…、『CMクリエーター』。

私や美帆、久住は、いち『プランナー』である。



そして…


『菱沼いちか』。

彼女はこの度保険会社のCMに起用された、若手の女優。



「え~っ、保険のCMに出るなんてクリーンなイメージでいいばっかじゃん。何様よ、菱沼いちか。」



「……それがさあ…、家族愛がテーマの内容だって提示したら、それが駄目だったみたい。でもクライアントもイメージは彼女しかいないって堂々巡りだったらしくて…、木村さんが板挟みになってたんだって。」



「…わけわからんなあ、菱沼いちか。」